企画からデザイン、型紙、縫製、販売まで一人で行うということ

企画からデザイン、型紙、縫製、販売まで一人で行うということ

アパレルの世界は、かなり分業化されています。

生地メーカー、副資材メーカー、パタンナー、裁断屋、縫製工場、加工業者、販売員など、一着の服ができるまでには多くの仕事があります。

ブランドの規模が大きくなれば、分業は必要です。私自身、それを否定するつもりはありません。

そもそも、私のような小さなブランドでも現在の価格で品質の良いデニム生地を購入できるのは、大規模なブランドが大量に生地を使い、生地メーカーの生産を支えているからでもあります。

その一方で、ダンジョデニムでは、企画、デザイン、型紙、裁断、縫製、販売まで、できるだけ自分で行っています。

今回は、一人で服を作って販売することのメリットとデメリットについて書いてみます。

デザインから製造までのズレが少ない

一番大きなメリットは、頭の中で考えたものを、そのまま型紙や縫製に反映できることです。

外注する場合、デザインを仕様書にして、パタンナーに伝え、さらに縫製工場へ伝える必要があります。

もちろん優れた専門業者であれば、非常に正確に形にしてくれます。

ただ、関わる人が増えるほど、細かなニュアンスを伝えるための説明が必要になります。

自分で型紙を引き、自分で縫う場合は、その途中で、

「ここはもう少し細くした方がいい」
「この縫い方だと少し重たい」
「やっぱりポケット位置を5mm動かそう」

と思えば、その場で変更できます。

サンプルも納得するまで作り直せます。

少量生産だからこそ、量産では採用しづらいデザインを試すこともできます。

お客様の要望にその場で答えやすい

販売まで自分で行っていると、お客様から直接要望を聞けます。

そして、その要望を自分で型紙や縫製に反映できます。

料理店で例えるなら、

「メニューにはないけど、オムライスは作れますか?」

と聞かれたときに、料理人本人がその場にいるようなものです。

「できます」
「できますが、少し料金がかかります」
「この仕様では難しいです」

と、その場で判断できます。

袖丈を変える、糸の色を変える、ポケットを追加する、といった相談にも対応しやすくなります。

企画する人、作る人、売る人が別々の場合と比べると、この距離の近さは大きなメリットだと思います。

外注先の事情に左右されにくい

服を外注して作る場合、当然ですが外注先の事情にも影響されます。

繁忙期で納期が長くなったり、工賃が上がったり、これまでお願いしていた工場が廃業したりすることもあります。

縫製業界では高齢化も進んでいます。

「今までお願いしていた工場がなくなったので、新しい縫製工場を探したら以前よりかなり高かった」

ということも今後増えていくと思います。

自分で縫製していれば、そのリスクは小さくなります。

もちろん生地や副資材の価格上昇からは逃れられません。

それでも、縫製工賃について外部と価格交渉をする必要はありません。

自分一人が生活できるだけの利益を確保できればいい、という小さなブランドならではの考え方もできます。

ノウハウが自分の中に残る

自分で型紙を作り、裁断し、縫製していると、失敗も含めて経験が蓄積されます。

「この仕様は縫いにくい」
「この生地ならこの縫い方が合う」
「この型紙だと着たときにここが余る」

といった経験が、次の商品にそのまま生きます。

外注すれば完成品は手に入りますが、製造工程で得られる経験まですべて自分の中に残るわけではありません。

これは長くブランドを続けるうえで、大きな財産だと思っています。

中間のマージンも少なくなる

発注から製造、販売までの間に関わる会社が増えれば、それぞれに利益が必要です。

それ自体は当然のことです。

ただ、一人でできる範囲を増やせば、その分だけ中間コストは少なくなります。

販売価格を必要以上に高くせず、自分の製造工賃も確保しやすくなります。

誰かの工賃を無理に下げる必要もありません。

一方で、専門業者にはかなわない部分もある

もちろん、一人で全部やることが優れているわけではありません。

縫製工場は毎日大量の服を縫っています。

同じ工程を繰り返しているので、スピードも技術も非常に高いです。

「餅は餅屋」という言葉の通りです。

一着あたりの製造コストについても、一定以上の数量を作るなら工場生産の方が安くなります。

一人では大量生産もできません。

100着、1000着と販売するブランドになれば、一人で縫うという方法は現実的ではなくなります。

一人でやることには大きなリスクもある

一人で製造しているブランドの場合、本人が病気やケガをすると生産が止まります。

スタッフのいない寿司屋と同じです。

自分が動けなくなれば、商品も作れません。

メール返信、発送、接客、Webサイトの更新なども自分で行うため、製造以外の仕事もかなりあります。

日中に縫製していると、メールの返信が遅れることもあります。

営業時間を長くすれば、その分だけ製造時間が減ります。

一人で全部できることは強みですが、一人しかいないことは同時に弱点でもあります。

すべてを自分でやるわけではない

私は「何でも自分でやればいい」とは考えていません。

外注した方がいい仕事もたくさんあります。

判断するときに考えているのは、

その仕事がブランドの個性に直結するか。
自分で技術を身につけるために、どれくらい時間と設備投資が必要か。
外注先の選択肢が十分にあるか。

という点です。

例えば、生地そのものを織る設備を自分で持つのは現実的ではありません。

特殊な加工も、専門業者の設備と経験を使った方がいい場合があります。

選択肢の多い仕事であれば、外注するメリットも大きいです。

反対に、デザイン、型紙、縫製のようにブランドの商品そのものに直結する部分は、できるだけ自分の手元に残したいと思っています。

これから服を作る人と、服を作れる人

アパレル業界では、ブランドを立ち上げたい人やデザイナーになりたい人は今後も多いと思います。

企画やデザインは、「自分が作りたいものを考える」という実感を得やすい仕事です。

一方、製造の現場は基本的に、誰かが考えたものを形にする仕事です。

そのため、デザインをやりたい人に比べると、縫製や製造を仕事にしたい人はどうしても少なくなります。

縫製だけではなく、ミシン屋さん、生地屋さん、特殊加工屋さんなどの周辺産業でも、人材不足は今後さらに大きな問題になると思います。

服を作りたい人はいる。

しかし、それを実際に形にする人は減っていく。

「好きなことを仕事に」したい人が増えている今、そしてものづくりの現場のように長時間集中するのが難しくなっている今、今後もこのアンバランスな状態は、しばらく続くのではないでしょうか。

そう考えると、企画から型紙、裁断、縫製、販売まで一通りできることは、小さなブランドにとって以前より大きな強みになっているように感じます。

大量には作れません。

効率も、専門工場にはかないません。

それでも、自分が考えたものを自分で形にし、自分の言葉でお客様に説明して販売する。

小さなブランドだからこそできる、この一連の流れは、これからも大切にしたいと思っています。

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