趣味でデニムを縫うのが難しい理由

趣味でデニムを縫うのが難しい理由

こんにちは。DANJO DENIMの福川です。

私は岡山県倉敷市の児島で、デニムジャケットを中心としたデニム製品を製作しています。高校時代からGジャンが好きで、2017年に茨城から岡山へ移住し、デニムブランドを立ち上げました。

DANJO DENIM 福川

服を自分で縫うことは、趣味としても楽しいものです。家庭用ミシンから始めて、さらに本格的な縫製に挑戦したいという方もいると思います。

ところが、ジーンズやデニムジャケットのような厚手のデニム製品になると、一般的な洋裁とは少し事情が変わります。

難しいのは、単に「生地が厚いから」だけではありません。ミシン、作業場所、騒音、縫製方法、設備のメンテナンスなど、周辺環境を整えるハードルが高いのです。

この記事では、普段デニム製品を縫っている立場から、趣味で本格的なデニム縫製を始めるときにぶつかりやすい壁を紹介します。

デニムを縫うときにぶつかる壁

ここでは、私が普段扱っている12〜13オンス程度のデニムを想定しています。シャツなどに使われる薄手のデニムとは条件が異なります。

壁① 本格的に縫うなら工業用ミシンが必要になる

厚手のデニムが難しい理由として、まず思い浮かぶのが生地の厚さです。

1枚や2枚のデニムを縫うだけなら、家庭用ミシンでも対応できる場合があります。しかし、ジーンズやデニムジャケットでは、縫い代が重なって8枚、場合によっては10枚以上の厚さになる部分があります。

こうなると、家庭用ミシンでは安定して縫うことが難しくなります。針が進まなかったり、縫い目が乱れたり、針が折れたりすることもあります。

職業用ミシンでも縫える場合はありますが、厚手のデニムを継続して安定した品質で縫うなら、厚物に対応した工業用ミシンが使いやすくなります。

ただし、工業用ミシンは本体もミシン台も大きく、家庭用ミシンのように簡単に収納できるものではありません。ここから一気に設備のハードルが上がります。

そして、工業用ミシンを購入するときに重要なのが、相談できるミシン屋さんの存在です。

工業用ミシンは、購入して置けばそのまま使えるとは限りません。縫う生地や製品に合わせた調整が必要ですし、故障したときには修理も必要です。

場合によっては、縫いやすくするために部品を加工したり、溶接して使いやすい形に調整したりと、現場に合わせた工夫をしてくれるミシン屋さんもいます。

ところが、こうした工業用ミシンを扱えるミシン屋さんを探すこと自体が簡単ではありません。職人の高齢化などによって廃業する業者もあり、地域によっては相談できる業者がなかなか見つからないこともあります。

つまり、本格的なデニム縫製では「どのミシンを買うか」だけでなく、「そのミシンを調整・修理してくれる人がいるか」まで考える必要があります。

壁② ミシンが1台では足りない

家庭用ミシンには、直線縫い、かがり縫い、ボタンホールなど、さまざまな機能が1台に入っています。

一方、工業用ミシンは基本的に、それぞれの作業に特化しています。

私がデニムジャケットを縫う場合は、主に厚物用本縫いミシン、巻き縫いミシン、閂止めミシン、オーバーロックミシンを使用しています。

ジーンズ工場になると、本縫い、巻き縫い、閂止め、オーバーロック、ボタンホール、ベルトループなど、さらに多くの専用ミシンが使われます。

もちろん、趣味でデニムを縫うためにすべてを揃える必要はありません。工程によっては別の縫い方で代用できます。

それでも、本格的に製品と同じような仕様を再現しようとすると、必要な設備が増えていきます。

ミシン以外にも、アイロンや裁断スペースが必要です。工業用ミシンは購入して終わりではなく、調整や修理も必要になるため、相談できるミシン屋さんの存在も重要です。

壁③ 音と振動の問題がある

工業用ミシンは、ゆっくり動かせば意外と静かなものもあります。

しかし、すべての設備が静かなわけではありません。閂止めやボタンホールなどのミシンは動作音が大きく、業務用アイロンのバキュームもかなり音が出ます。

さらに、音だけでなく振動もあります。

マンションや集合住宅で使用する場合は、隣室だけでなく下の階への影響も考える必要があります。

工業用ミシンを何台も置くとなれば、作業スペースの確保も必要です。デニム縫製は、ミシンを買えばすぐ始められるというものではなく、作業場所まで含めて考える必要があります。

壁④ 縫い方の情報が少ない

一般的な洋裁であれば、本や動画、洋裁教室などから多くの情報を得られます。

一方、ジーンズやデニムジャケットを工場と同じような仕様で縫う方法については、一般的な洋裁ほど情報が多くありません。

私自身、関東に住んでいた頃にジーンズの縫い方を調べましたが、知りたい工程まで詳しく説明した資料を見つけるのには苦労しました。

現在は動画などで見られる情報も増えていますが、使うミシン、アタッチメント、縫う順番、厚みへの対処など、実際にやってみないと分からないことも多くあります。

洋裁教室そのものは全国にたくさんあります。しかし、「巻き縫いミシンが置いてある洋裁教室はどれくらいあるでしょうか」と考えると、一気に数は少なくなると思います。

巻き縫いミシンは、ジーンズやデニムジャケットではよく使われる設備ですが、一般的な洋裁では必須ではありません。そのため、デニム製品を工場に近い仕様で学ぼうとすると、教えてもらえる場所が限られてきます。

デニム縫製の難しさは、技術そのものだけでなく、「専門的な設備に触れながら学べる場所が少ない」という点にもあります。

壁⑤ 厚手の生地は意外と体力を使う

デニムを縫う作業は、ミシンを踏んでいるだけではありません。

縫製が進むにつれてパーツがつながり、製品全体が大きく、重くなっていきます。

その生地を針の下へ送り込んだり、方向転換のために持ち上げて回したりする作業が何度も発生します。

厚手のデニムジャケットやジーンズを長時間縫っていると、腕や肩、腰にも負担がかかります。

壁⑥ インディゴの色移りがある

これは大きな障害ではありませんが、デニムならではの注意点です。

インディゴ染めのデニムは、縫っているだけでも手やミシン、アイロンなどに色が付くことがあります。

そのまま白や淡色の生地を扱うと色が移る可能性があるため、デニムを縫った後はミシンや作業台などを掃除する必要があります。

複数の素材を同じ設備で扱う場合は、こうした管理も必要です。

それでもデニムを縫いたい場合はどうするか

ここまで読むと、かなり大変そうに見えるかもしれません。

ただし、最初から工場と同じ設備をすべて揃える必要はありません。目的に合わせて環境を整えていけば、できることは増えていきます。

方法① まずは必要最低限の設備から始める

趣味で始めるのであれば、最初から何台もの工業用ミシンを購入する必要はありません。

まずは自分が何を作りたいのかを決め、その製品に必要な工程を調べることが大切です。

すべてのディテールを工場仕様で再現しようとすると設備が増えますが、縫い方や仕様を変更すれば、少ない設備で作れる場合もあります。

方法② デニム産地や専門業者とのつながりを持つ

私の場合は、デニム産地である岡山県倉敷市の児島へ移住したことで、環境が大きく変わりました。

児島には、生地メーカー、縫製工場、加工場、裁断屋、工業用ミシンを扱うミシン屋さんなど、デニム製品を作るための事業者が集まっています。

分からないことがあったときに相談できる人が近くにいることは、とても大きなメリットです。

もちろん、デニムを縫うために必ず移住する必要はありません。産地を訪れたり、専門業者とつながったりするだけでも、ネットだけでは得にくい情報に触れられることがあります。

方法③ 作業できる場所を確保する

本格的な工業用ミシンを導入するなら、設備だけでなく場所も重要です。

ミシンを置くスペース、裁断するスペース、アイロンを使う場所が必要になります。

さらに、音や振動で周囲に迷惑をかけない環境も考えなければなりません。

私が児島で感じているメリットの一つは、縫製業やアパレル関連の事業者が多く、服づくりをする環境を比較的整えやすいことです。

方法④ 仕事として始めるなら創業支援も調べる

趣味の範囲を超えて、将来的に縫製業やブランドとして事業化する場合は、自治体などの創業支援制度を調べてみる方法もあります。

工業用ミシンなどの設備は高額なので、利用できる支援制度があるかどうかで初期費用が大きく変わる場合があります。

制度の内容や対象者は時期によって変わるため、購入する前に自治体や商工会議所などへ確認することをおすすめします。

デニム縫製が難しい本当の理由

デニムを縫う難しさは、単純に「生地が厚くて針が通りにくい」ことだけではありません。

厚手の生地を安定して縫えるミシンが必要になり、作りたい仕様によっては複数の専用ミシンが必要になります。

さらに、設備を置く場所、騒音や振動への対策、ミシンの修理や調整をしてくれる人、専門的な縫製方法を学べる環境も必要です。

つまり、デニム縫製は「技術」だけではなく「環境」を整えるハードルが高いのです。

逆に言えば、その環境さえ整ってくると、できることは一気に増えます。

私自身も、デニム産地の児島へ移住し、周囲の事業者や職人の方々と関わることで、少しずつできることを増やしてきました。

デニムを自分で縫ってみたい方は、最初から完璧な設備を目指すのではなく、まずは自分が作りたいものに必要な設備と技術を一つずつ調べてみるのがよいと思います。

最後に

ここまで、デニムを縫うためには工業用ミシンや専用設備、作業場所など、さまざまな環境が必要だと書いてきました。

ただし、必ずしも多くの工業用ミシンを揃えなければジーンズが縫えない、というわけではありません。

実際に、職業用ミシン1台を中心に使い、ボタンホール以外の工程をほぼすべて縫っている方も知っています。

専用ミシンを使えば作業しやすく、工場に近い仕様も再現しやすくなります。一方で、仕様や縫い方を工夫すれば、限られた設備でもデニム製品を作ることは可能です。

この記事で伝えたいのは、「趣味では無理」ということではありません。本格的なデニム縫製には一般的な洋裁とは違うハードルがありますが、まずは今ある設備でできる方法を考えながら始めてみるのも一つの方法です。

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